オーソリゼーション(authorization)とは、クレジットカードを利用する際に、そのカードで決済できるか確認する作業のことです。
日本語では「信用照会」「与信確保」「信用承認」などの呼び方をされることもあります。
この記事では、次の内容を説明します。
- オーソリとは何か
- オーソリの目的
- オーソリが承認されない理由
- オーソリ以外に必要な不正利用対策
利用者にはなかなか意識されにくいオーソリですが、クレジットカード決済には欠かせない仕組みなので、ぜひこの機会に理解を深めてみてください。
目次
オーソリ(オーソリゼーション)とは
オーソリ(オーソリゼーション)とは、「購入者のクレジットカードで決済できるかを確認する作業」のことです。
ECサイトでおこなわれるオーソリの流れは、下記のように進むのが一般的です。
- クレジットカードを利用した注文が入る
- ECサイト事業者がクレジットカード会社に利用者のカード情報を送信する
- クレジットカード会社は利用者の与信情報や販売情報などを照らし合わせる
- 問題がなければ、クレジットカードによる取引が成立
このようにオーソリがおこなわれ、クレジットカードの有効性を確認しています。
中には少額(1円など)を実際に引き落として、カードの有効性を確認する方法もあり「1円オーソリ」と呼ばれます。
なお、「1円オーソリ」について知りたい方は下記の記事をご確認ください。
さらに次の記事では、引き落とされたオーソリが返金されるタイミングや返金されない場合の対処法などを紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
オーソリを利用する2つの目的
オーソリを利用する目的は、下記の2つです。
- 悪用者による不正利用の防止
- 利用限度額の確認
さっそく、見てみましょう。
【目的1】悪用者による不正利用の防止
オーソリを実施すると、偽造されたり盗難されたりした不正なカードが使用されていないかをチェックできます。
たとえば、紛失したクレジットカードや利用停止されているカードを使って支払いを試みる悪用者がいた場合、その取引は承認されません。
所有者がカード会社に届出を出していれば、不正利用を防ぐことが可能です。
クレジットカードの不正利用は年々増加傾向にあり、オーソリは上記のような不正利用をチェックする重要な役割を担っています。
ただし、偽造・盗難されたクレジットカードかどうかはオーソリで判断できるものの、「カードを利用した人が契約者本人かどうか」までは見抜くことができません。
その場合、「3Dセキュア」や「eKYC」「セキュリティコード」などの仕組みを活用して、本人確認を実施する方法が有効です。
内容 | 効果 | |
---|---|---|
3Dセキュア | クレジットカード情報を入力するときに実施される 本人認証パスワードを入力して、本人確認をおこなう | クレジットカード所有者しかわからない情報を入力するので、不正利用を防止できる |
eKYC | 自身の写真と運転免許証などを同時に撮影し、人物の同一性を確認する | クレジットカード所有者になりすました不正利用を防げる |
セキュリティコード | クレジットカードに記載された、3〜4つの数字を入力して、カードが手元にあるか確認する | クレジットカード番号や有効期限などの情報が流出した場合でも不正利用を防止できる |
本人確認を実施する方法に関しては、後ほど「オーソリだけでできない本人確認を実施する方法を3つ紹介」で詳しく解説します。
【目的2】利用限度額の確認
オーソリの目的には、クレジットカードの利用限度額を超えていないかを確認する役割もあります。
利用限度額を超えたクレジットカードは、原則として次の引き落とし日まで利用することができません。
しかし、限度額まで利用されているカードなのかはクレジットカードの券面を見ただけでは分からないため、オーソリを実行して確認します。
利用限度額を超えたクレジットカードでは、支払いが正常におこなわれないおそれがあるため、トラブルを避けるためにも決済時のオーソリが重要なのです。
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オーソリの仕組みを2つの方式に分けて解説
本章では、オーソリの2つの仕組みを詳しく説明します。
- 自動オーソリ
- 手動オーソリ
方式によってオーソリが実行されるタイミングは異なるので、どのような違いがあるのか詳しく見てみましょう。
【方式1】自動オーソリ
自動オーソリは、決済がおこなわれるタイミングやカード情報が登録された時点など、事業者様が事前に設定したタイミングで実施されます。
たとえば、商品在庫が確保されているECサイトなどでは、自動オーソリを採用していることがあります。
自社の設定したタイミングで自動でオーソリがおこなわれるため、手間がかからないのがメリットです。
しかし、実店舗と在庫を共有している場合には、下記のようなデメリットが発生します。
- 実店舗で商品が売れたと同時に、その商品がECサイトでも注文されることがある
- ECサイトが自動でオーソリをおこなうシステムの場合、実際にはもう在庫がないにもかかわらず、決済が進行してしまうことがある
あらかじめ設定したタイミングでオーソリが実施されるため、事業者側の手間を減らすことはできますが、実店舗で在庫を共有している場合は注意が必要です。
【方式2】手動オーソリ
手動オーソリは、担当者が任意のタイミングでオーソリを実施できる仕組みです。
たとえばホテル予約の場合、実際に宿泊がおこなわれるのは数ヶ月後になることもあります。
この場合、都度オーソリを実施していると、キャンセルが発生した際に処理が煩雑になってしまいます。
しかし、手動オーソリであれば、キャンセル手数料が発生するタイミングでオーソリを実施することが可能です。
そのため、自動オーソリで対応できないタイミングに発生するオーソリの場合は、手動オーソリの方がスムーズに処理できます。
オーソリが承認されない3つの理由
オーソリが承認されない理由としては、次の3つが挙げられます。
- 暗証番号が間違っている
- 利用限度額に達している
- 問題のあるカードが利用されている
詳しく見てみましょう。
【理由1】暗証番号が間違っている
オーソリが承認されない理由の1つ目は、暗証番号の入力ミスです。
事前に設定した暗証番号と入力した番号が異なると、オーソリは承認されません。
しかし、さまざまなカードを持っていると、番号を間違えてしまったり忘れてしまったりすることもあります。
その場合、オーソリは承認されず、クレジットカードで決済できなくなってしまうので、注意しなければなりません。
【理由2】利用限度額に達している
先ほども述べましたが、クレジットカードが利用限度額に達しているとオーソリは承認されません。
クレジットカードを作る際には「50万円」「100万円」など、カードの利用限度額が設定されています。
クレジットカードによって設定されている限度額は異なりますが、上限に達してしまうと、オーソリは承認されません。
クレジットカードの券面からは限度額に達しているかわからないため、クレジットカードを利用する方は会員サイトでチェックするなどして限度額をこまめにチェックしましょう。
【理由3】問題のあるカードが利用されている
オーソリが承認されない理由として、問題のあるカードが利用されている場合があります。問題とは、下記のような場合のことです。
- 紛失や盗難によって利用を停止しているカード
- 有効期限が切れているカード
紛失や盗難されたクレジットカードをオーソリで防げるのは、利用を停止している時だけです。
もし、所有者が紛失や盗難に気づいていない場合、不正利用されることがあります。
しかし、カード所有者が紛失に気づき、不正利用されていると判明した場合は、チャージバック(※)申請ができます。
※チャージバックとは、ユーザーが決済に同意していない場合、クレジットカード会社が売り上げを取り消して所有者に返金すること
したがって、身に覚えのない不正利用に気づいた場合は、チャージバック申請を検討してみてください。
なお、事業者の視点に立つと、ユーザーのチャージバック申請が承認されると、事業者が返金を負担しなければなりません。
チャージバックが起こると、事業者は商品も売り上げも失ってしまいます。
このような事態を避けるためにも、先ほど述べた「3Dセキュア」「eKYC」「セキュリティコード」などの対策や、専門的な不正対策が必要です。
なお、専門的な不正対策については「不正利用にはオーソリだけでなく専門的な対策も必要」で解説しています。
また、チャージバックについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご確認ください。
オーソリだけでは全ての不正使用は防げない
クレジットカード加盟店は、オーソリによって正常に決済できるカードかをチェックします。
ただし、オーソリはあくまでクレジットカードが決済できるかどうかを判断するためのもので、カード使用者が名義人本人であるかを確認するものではありません。
そのため、カード使用者が名義人本人であるかは別の方法で確認する必要があります。本人確認の方法については、次章でお伝えします。
なお、かっこ株式会社ではEC関連549社へアンケートを実施し、各社の不正に関する認知度を独自に調査しました。
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オーソリだけでできない本人確認を実施する方法を3つ紹介
オーソリはカードの有効性や利用限度額を確認できるものの、本人確認までは対応していません。
そこで本章では、本人確認が実施できる方法を3つ紹介します。
- 3Dセキュア
- セキュリティコード
- eKYC
【方法1】3Dセキュア
3Dセキュアとは、クレジットカード情報を入力する際に実施する本人認証サービスのことです。
クレジットカード契約者にしか分からない認証情報を入力するので、第三者が解答することはできず、不正利用の防止が期待できます。
3Dセキュアについては下記の記事でも詳しく解説しているため、気になる方はぜひチェックしてみてください。
なお、3Dセキュアは2022年10月に「3Dセキュア2.0」へ完全移行しました。
3Dセキュア2.0の特徴である「リスクベース認証」や1.0との違いについては、次の記事で解説していますので、ご一読ください。
【方法2】セキュリティコード
セキュリティコードとは、クレジットカードごとに割り振られている3〜4桁の番号のことです。
取引時にセキュリティコードの入力を求めることで、クレジットカード番号と有効期限が流出したとしても、不正利用されるリスクを減らせます。
セキュリティコードについては下記の記事でも解説しているため、チェックしてみてください。
【方法3】eKYC
eKYCとは、オンラインで本人確認できる仕組みのことです。
オンラインサービスを申し込む場合などにすぐ本人確認まで実施できるため、書類の郵送にかかる時間ややりとりを短縮できます。
具体的には、下記のような流れで本人確認をします。
- 申し込み時に、PCやスマホなどで本人確認書類をアップロードする
- eKYCの仕組みで本人確認をおこない、最短数分程度で確認が完了
eKYCの概要やメリット・デメリットについては次の記事で紹介しているため、ぜひご覧ください。
不正利用にはオーソリだけでなく専門的な対策も必要
オーソリを悪用した、巧妙な犯罪もおこなわれています。
ここで「1円オーソリ」の仕組みの隙をついた事例を紹介しますので、悪用者の巧妙な手口をご確認ください。
【概要】
悪用者は、店舗内での物品販売で1円オーソリをおこなっているガソリンスタンドを狙い、スリランカの銀行が発行したデビッドカードでタイヤを購入しようとした
店舗側は、1円オーソリでカードの有効性を確認しタイヤを販売
悪用者は、その後もタイヤを購入し続け、決済金額もさらに増加
半年後、スリランカの銀行から「給油以外で1円オーソリを利用するのはルール違反」と指摘があり、カード会社へ返金要求があった
店舗が1円オーソリを給油以外でおこなっていたのは事実で、カード会社は返金要求に応じざるを得ず、多大な損失がでた
悪用者は、購入したタイヤを転売していた
※参考:「産経ニュース」
このように、カードの有効性を判断できたとしても、それを逆手に取った犯罪がおこなわれるおそれがあります。
事例のような、システムの隙をついた不正は今後も増えるおそれがあり、より専門的な対策が必要です。
そこでおすすめなのが、不正注文検知システムの導入です。
たとえば、かっこ株式会社が提供する「O-PLUX」は不正手法や決済手段にマッチした審査モデルを構築し、不正をいち早く検知します。
注文データから不正注文なのか正規の注文なのかを判定し、審査結果を三段階に分けて(安全度合い)伝えるため、事業者様もより不正を判断しやすくなります。
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まとめ
オーソリは、悪用者による不正利用を防ぐと同時に、利用限度額を超えるカード取引を防止する役割も果たします。
しかし、本人確認まではおこなえないため、不正利用を完全に防ぐことはできません。
オーソリでは確認できない「本人確認」は、下記の方法でチェックできます。
- 3Dセキュア
- セキュリティコード
- eKYC
しかし、上記の方法でも防げない事案が発生しているため、事業者様には専門的な対策の導入をおすすめします。
なお当サイトでは、不正対策の導入方法や、不正の被害を改善したケースの資料を無料で配布していますので、ぜひチェックしてみてください。